犬の肝臓病の症状・原因・治療・食事を獣医師監修で徹底解説
この記事のポイント:
- 犬の肝臓は再生能力が高い反面、症状が出た時点で機能の70%以上が損なわれているケースが多く、早期発見が生命予後を左右します。
- 代表的な疾患は慢性肝炎・肝硬変・門脈体循環シャント・胆泥症・肝臓腫瘍。ALT/ALP上昇は健康診断で見逃されがちです。
- 治療費は内科管理で月1〜3万円、外科手術で20〜60万円、長期管理が必要です。
犬の肝臓の役割
肝臓は体内最大の代謝臓器で、以下の重要機能を担います。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 解毒 | アンモニア・薬物・毒素の無害化 |
| タンパク合成 | アルブミン・凝固因子の生成 |
| 胆汁産生 | 脂肪の消化吸収 |
| 糖代謝 | グリコーゲン貯蔵・放出 |
| 脂質代謝 | コレステロール・中性脂肪の処理 |
| ビタミン貯蔵 | A・D・E・K・B12 |
**肝臓は「沈黙の臓器」**と呼ばれ、機能の70%が失われても明確な症状が出ないことがあります。
主な肝臓病の種類
| 疾患 | 特徴 | 好発 |
|---|---|---|
| 慢性肝炎 | 長期の炎症で肝細胞が破壊される | 中高齢 |
| 肝硬変 | 慢性炎症の終末像。線維化が進行 | 高齢 |
| 門脈体循環シャント | 血液が肝臓をバイパスする先天疾患 | 若齢(1歳未満) |
| 胆泥症・胆嚢粘液嚢腫 | 胆汁が泥状・ゼリー状になる | ミニチュアシュナウザー等 |
| 銅蓄積性肝炎 | 肝臓に銅が溜まる遺伝性疾患 | ベドリントンテリア等 |
| 肝臓腫瘍 | 原発性または転移性 | 高齢 |
| 脂肪肝 | 肥満・糖尿病に関連 | 全犬種 |
症状 -- 初期〜末期
初期症状(見逃しやすい)
- 食欲のムラ
- 軽度の元気低下
- 嘔吐を時々する
- 水をよく飲む
- 健康診断でALT/ALP高値
進行期の症状
| 症状 | 意味 |
|---|---|
| 黄疸(歯茎・白目が黄色い) | ビリルビン上昇 |
| 腹水(お腹が膨らむ) | アルブミン低下 |
| 体重減少 | 代謝異常 |
| 意識混濁・徘徊 | 肝性脳症(アンモニア上昇) |
| 出血傾向 | 凝固因子低下 |
| 多飲多尿 | 尿素合成低下 |
原因とリスク犬種
主な原因
| 原因 | 詳細 |
|---|---|
| 薬剤性 | NSAIDs、抗てんかん薬、ステロイド長期投与 |
| 感染性 | レプトスピラ、アデノウイルス |
| 代謝性 | 糖尿病、クッシング症候群、甲状腺機能低下症 |
| 中毒 | キシリトール、カビ毒、マクロリド系毒 |
| 遺伝性 | 銅蓄積症、PSS(先天性シャント) |
| 肥満 | 脂肪肝 |
好発犬種
- ヨークシャーテリア(先天性PSS)
- ベドリントンテリア・ウェストハイランドホワイトテリア(銅蓄積)
- ドーベルマン(若齢性慢性肝炎)
- コッカースパニエル(慢性肝炎)
- ラブラドール(銅蓄積・慢性肝炎)
- ミニチュアシュナウザー(胆泥症・胆嚢粘液嚢腫)
検査と診断
| 検査 | 内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 血液検査(肝酵素) | ALT, ALP, GGT, AST | 3,000〜8,000円 |
| 肝機能検査 | 総ビリルビン、アルブミン、アンモニア、総胆汁酸 | 5,000〜12,000円 |
| 凝固系検査 | PT, APTT | 3,000〜6,000円 |
| 腹部超音波 | 肝臓の大きさ・構造・胆嚢・血流 | 5,000〜10,000円 |
| CT検査 | 門脈体循環シャント診断 | 50,000〜120,000円 |
| 肝生検 | 確定診断(病理) | 30,000〜80,000円 |
※ 血液検査費用の相場は病院差があります。
ALT高値の読み方
| ALT値 | 解釈 |
|---|---|
| 正常上限の2倍以下 | 軽度・経過観察 |
| 2〜5倍 | 中等度・要精査 |
| 5倍以上 | 重度・速やかな精査 |
| 10倍以上 | 急性肝障害疑い |
治療
内科治療
| 治療 | 目的 | 月額費用 |
|---|---|---|
| ウルソデオキシコール酸 | 胆汁排泄促進 | 3,000〜6,000円 |
| SAMe・シリマリン | 肝保護・抗酸化 | 4,000〜8,000円 |
| ラクツロース | アンモニア低下(肝性脳症) | 2,000〜4,000円 |
| 抗生剤 | 細菌性肝炎 | 3,000〜6,000円 |
| プレドニゾロン | 免疫介在性肝炎 | 2,000〜5,000円 |
| 処方食(肝臓サポート) | 低タンパク・低銅 | 5,000〜12,000円/月 |
外科治療
- 門脈体循環シャント結紮術: 30〜80万円
- 胆嚢摘出術(胆泥症悪化・粘液嚢腫): 15〜40万円
- 肝臓腫瘍切除: 20〜60万円
肝臓病の食事管理
肝臓病の食事療法は疾患により異なります。
| 疾患 | 食事方針 |
|---|---|
| 慢性肝炎・肝硬変 | 低〜中タンパク、高消化性炭水化物、抗酸化物質 |
| 肝性脳症 | 低タンパク(植物性主体)、ラクツロース |
| 銅蓄積症 | 低銅(レバー・貝類・チョコ禁止) |
| 門脈シャント | 低タンパク、手術前後で調整 |
| 胆泥症 | 低脂肪、食物繊維 |
処方食の例
- ロイヤルカナン「肝臓サポート」
- ヒルズ「l/d」
- ピュリナ「HPハイドロライズドプロテイン」
【独自】肝臓ケアの年間モデルプラン
| 時期 | 項目 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 1月 | 定期血液検査 | 8,000円 |
| 3月 | 腹部超音波 | 8,000円 |
| 4〜6月 | 内服薬 | 15,000円 |
| 7月 | 再検査(肝酵素・アンモニア) | 10,000円 |
| 8〜12月 | 内服・処方食継続 | 50,000円 |
| 年間合計 | 約15〜25万円 |
受診セルフチェック
- 食欲にムラがある
- 時々嘔吐する
- 歯茎や白目が黄色っぽい
- お腹が膨らんできた
- 散歩を嫌がる
- ぼーっとする・徘徊する
- 最近体重が減った
- 健診でALT/ALPが高いと言われた
3項目以上該当なら1週間以内、黄疸・意識混濁があれば即日受診してください。
FAQ よくある質問
Q1. 肝臓の数値(ALT)が高いと言われました。すぐ治療が必要ですか? A. 一過性の上昇(脂肪食、運動後、薬剤)もあるため、2〜4週間後の再検査が一般的です。ただし2倍以上の上昇は精査が推奨されます。
Q2. 肝臓病は完治しますか? A. 原因により異なります。薬剤性は原因薬剤中止で改善しますが、慢性肝炎・肝硬変は完治困難で長期管理が必要です。門脈シャントは手術で完治可能な場合があります。
Q3. 肝臓サポートのサプリは効きますか? A. SAMe・シリマリン(オオアザミ)は一定のエビデンスがあります。ただしサプリ単独で病気は治せません。
Q4. 肝臓病の犬の平均寿命は? A. 慢性肝炎の診断後中央生存期間は約18〜36ヶ月と報告されていますが、早期発見・適切な治療で延長可能です。
Q5. 予防接種は受けられますか? A. 状態が安定していれば可能ですが、ワクチン後に一時的に肝酵素が上昇することがあります。必ず獣医師に相談してください。
Q6. ペット保険で肝臓病はカバーされますか? A. 新規加入時に既往症扱いになると対象外になるため、発症前の加入が重要です。ペット保険比較を参照してください。
まとめ
犬の肝臓病は症状が出にくく、健康診断の肝酵素チェックが早期発見の鍵です。7歳以降は年2回の血液検査を推奨します。治療は長期戦ですが、食事・薬・定期モニタリングの3本柱で進行を抑制できます。
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免責事項: 本記事は獣医師監修のもと一般情報を提供するもので、個別診療に代わるものではありません。