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犬のクッシング症候群の症状・検査・治療費を獣医師が解説
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犬のクッシング症候群の症状・検査・治療費を獣医師が解説

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監修: pet-dock獣医師監修チーム

犬のクッシング症候群の症状・検査・治療費を獣医師が解説【獣医師監修】

犬のクッシング症候群は中〜高齢犬に多い内分泌疾患で、「多飲多尿」「腹部膨満」「左右対称の脱毛」が3大症状です。ACTH刺激試験などの専門検査で確定診断を行い、トリロスタン内服による長期管理が可能です。診断費用は2〜5万円、治療薬は月1〜2万円程度で生涯継続が基本です。早期発見で生活の質を保てます。

この記事のポイント

  • クッシング症候群はコルチゾールが過剰に分泌される内分泌疾患で、中〜高齢犬に多く見られます
  • 「水をたくさん飲む」「お腹が膨らむ」「左右対称の脱毛」が3大症状です
  • 診断にはACTH刺激試験や低用量デキサメタゾン抑制試験など専門的な検査が必要です
  • トリロスタンの内服で長期管理が可能ですが、生涯治療が基本になります

「最近水をガブガブ飲むようになった」「お腹がぽっこり出てきた」「背中の毛が薄くなった」。シニア犬にこのような症状が現れたら、クッシング症候群の可能性があります。見過ごされやすい病気ですが、早期発見で生活の質を保てます。

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犬のクッシング症候群とはどんな病気ですか?

クッシング症候群は、正式には 副腎皮質機能亢進症(ふくじんひしつきのうこうしんしょう) と呼ばれる内分泌疾患です。副腎から「コルチゾール」というストレスホルモンが過剰に分泌されることで全身にさまざまな症状が現れます。

病気の基礎知識

  • 中年〜高齢犬(7歳以上)に多発
  • 小型犬に多い(プードル、ダックスフンド、ミニチュアシュナウザーなど)
  • 進行は緩やかで、症状が徐々に現れる
  • 人間のクッシング症候群と似た病態
  • 放置すると糖尿病・膵炎・血栓症などの合併症リスクが上昇

クッシング症候群には種類がありますか?

原因によって大きく3種類に分類されます。タイプによって治療方針と予後が変わります。

種類 原因 割合 治療
下垂体性(PDH) 下垂体の腫瘍でACTH過剰分泌 約80〜85% 内服(トリロスタン)
副腎性(ADH) 副腎自体の腫瘍 約15〜20% 手術または内服
医原性 ステロイド薬の長期投与 まれ 薬の漸減

下垂体性が最も多く、多くの症例は内服薬でコントロール可能です。

どんな症状が出たらクッシング症候群を疑うべきですか?

クッシング症候群の症状は多岐にわたりますが、特徴的な3大症状があります。加齢のせいと見過ごされやすいので注意が必要です。

3大症状

  1. 多飲多尿(PU/PD):水を大量に飲み、尿量も増える
  2. 腹部膨満(ポットベリー):お腹がぽっこり垂れ下がる
  3. 左右対称性の脱毛:体幹部の毛が薄くなる

その他の症状チェックリスト

  • 異常な食欲亢進(ガツガツ食べる)
  • 筋力低下・後ろ足のふらつき
  • 皮膚が薄くなり、血管が透けて見える
  • 色素沈着(皮膚が黒ずむ)
  • 膿皮症・石灰沈着を繰り返す
  • パンティング(ハァハァする)の増加
  • 疲れやすい・散歩を嫌がる
  • 感染症にかかりやすい

飲水量の増加は飼い主が気づきやすいサインです。犬のおしっこが多い・頻尿も参考に、日々の水分摂取量をチェックしましょう。目安は体重1kgあたり1日100ml以上飲む場合は要注意です。

どの犬種がなりやすいですか?

すべての犬種で発症する可能性がありますが、特にリスクの高い犬種があります。

リスクが高い犬種 特徴
トイプードル 下垂体性が多い
ミニチュアダックスフンド 国内で症例が多い
ミニチュアシュナウザー 海外でも多い
ボストンテリア 下垂体性が多い
ビーグル 高齢で発症しやすい
ヨークシャーテリア 小型犬リスク群
ボクサー 大型犬だが比較的多い

7歳以上になったら上記犬種は特に注意し、定期健康診断でスクリーニング検査を受けることをおすすめします。シニア犬のケアガイドもあわせてご覧ください。

動物病院ではどのように診断しますか?

クッシング症候群の診断は一回の検査では確定せず、複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。

診断ステップ

  1. 一般検査(スクリーニング)
  2. 特異的ホルモン検査(確定診断)
  3. 画像検査(タイプの鑑別)

1. 一般検査

検査 典型的な異常所見
血液検査 ALP著明上昇、コレステロール上昇、好中球増加、リンパ球減少
尿検査 尿比重低下(1.015以下)、尿糖
尿中コルチゾール/クレアチニン比 スクリーニングとして有用

詳細は血液検査の費用と項目ガイドもご覧ください。

2. 特異的ホルモン検査(確定診断)

検査名 内容 特徴
ACTH刺激試験 ACTH注射前後のコルチゾール測定 所要時間1〜2時間、最も一般的
低用量デキサメタゾン抑制試験(LDDST) デキサメタゾン注射後4・8時間の測定 感度が高い、所要時間8時間
高用量デキサメタゾン抑制試験 下垂体性と副腎性の鑑別 タイプ判定用

ACTH刺激試験が第一選択ですが、近年は試薬入手難のためLDDSTが使われることも増えています。

3. 画像検査

  • 腹部超音波:副腎のサイズ・形状確認、副腎腫瘍の検出
  • CT・MRI:下垂体腫瘍の有無、副腎腫瘍の転移評価

クッシング症候群はどう治療しますか?

治療はタイプによって異なりますが、下垂体性の多くは内服薬で長期管理します。

1. 内服薬治療(トリロスタン)

現在の第一選択薬は トリロスタン(商品名:バソパルTS、デソパン錠) です。

項目 内容
作用 コルチゾール合成を抑制
投与方法 1日1〜2回、食事と一緒に
効果発現 2〜4週間で臨床症状が改善
モニタリング 投与後ACTH刺激試験で調整
副作用 食欲不振、嘔吐、下痢、まれに副腎壊死

治療開始後の通院スケジュール:

時期 検査内容
投与10〜14日後 ACTH刺激試験、血液検査
1ヶ月後 再度ACTH刺激試験
3ヶ月後 再評価
以降 3〜6ヶ月ごとの定期検査

2. 外科治療

副腎腫瘍が原因の場合、副腎摘出術が選択肢になります。

  • 片側性の腺腫なら根治可能
  • 手術リスクが高く、専門病院での実施が推奨
  • 費用は30〜80万円程度

3. 放射線治療

下垂体腫瘍が大きい場合(神経症状を伴うマクロ腺腫)は放射線治療が選択されることもあります。大学病院や高度医療施設が必要です。

治療費はどれくらいかかりますか?

クッシング症候群は生涯治療が基本のため、継続的な費用がかかります。

診断時の費用

項目 費用目安
初診・一般血液検査 8,000〜15,000円
ACTH刺激試験 8,000〜15,000円
LDDST 10,000〜18,000円
腹部エコー 5,000〜10,000円
CT・MRI 50,000〜150,000円
診断一式の目安 3〜8万円

治療継続時の費用(月額)

犬のサイズ トリロスタン代 定期検査(月割) 月額目安
小型犬(5kg) 6,000〜10,000円 3,000〜5,000円 1〜1.5万円
中型犬(15kg) 10,000〜18,000円 3,000〜5,000円 1.5〜2.5万円
大型犬(30kg) 18,000〜30,000円 3,000〜5,000円 2.5〜4万円

生涯治療費の目安

平均余命を2〜3年と考えると、生涯治療費は50〜150万円 程度になるケースが多いです。ペット保険の加入有無で自己負担は大きく変わります。

余命・予後はどうですか?

クッシング症候群は完治は難しいものの、適切に治療すれば進行を抑え、良好なQOLを維持できます。

予後の目安

タイプ 生存期間中央値
下垂体性(治療あり) 約2〜3年
下垂体性(治療なし) 数ヶ月〜1年
副腎性腺腫(手術成功) 2〜3年以上
副腎性腺癌(転移あり) 数ヶ月

高齢で発症することが多いため、治療による寿命延長と生活の質改善が治療目標になります。

放置のリスク

治療せずに放置すると以下の合併症リスクが高まります。

  • 糖尿病の併発(約10%)
  • 高血圧・血栓症
  • 膵炎
  • 重度の感染症
  • 胆嚢粘液嚢腫

日常生活で気をつけることは?

治療中の犬に飼い主ができるケアは多くあります。

管理のポイント

  • 毎日の飲水量・尿量を記録する
  • 体重を週1回測定する(急な減少・増加に注意)
  • 食欲・元気・活動量の変化を観察
  • 投薬は必ず食事と一緒に、決まった時間に
  • 感染症予防(ワクチン、ノミダニ予防)
  • 定期検査を必ず受ける

食事管理

  • 高タンパク・低脂肪食が基本
  • 糖尿病併発時は療法食に切り替え
  • 肥満管理は重要(犬の肥満ガイドも参考に)
  • おやつは控えめに

注意すべき症状(急ぎの受診)

  • 元気消失、食欲不振が続く
  • 繰り返す嘔吐・下痢
  • 歩行困難、ふらつきの悪化
  • けいれん、失神
  • 急激な体調変化

元気がない・ぐったりしている場合は犬の元気がないサインも参考に早めに受診してください。

まとめ:早期発見と生涯管理がカギ

犬のクッシング症候群は、早期発見と適切な治療で生活の質を保てる病気です。以下のポイントを押さえましょう。

  • シニア犬の多飲多尿・腹部膨満・脱毛は要注意サイン
  • 診断には専門的なホルモン検査が必要
  • 治療の中心はトリロスタンの内服で、生涯管理が基本
  • 定期検査でコルチゾール値をモニタリングする
  • 月額1〜3万円、生涯50〜150万円程度の治療費がかかる
  • ペット保険への加入は早めに検討を

内分泌疾患の診療に慣れた動物病院での継続治療が理想的です。セカンドオピニオンも活用しながら、愛犬に合った治療計画を立てましょう。

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