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犬の頻尿・おしっこが多い原因と疑われる病気【獣医師監修】
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犬の頻尿・おしっこが多い原因と疑われる病気【獣医師監修】

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監修: pet-dock獣医師監修チーム

犬の頻尿・おしっこが多い原因と疑われる病気【獣医師監修】

愛犬が急にトイレの回数が増えた、散歩中に何度もおしっこをする、家の中で粗相をするようになった――そんな変化に気づいたら、泌尿器や内分泌系の疾患のサインかもしれません。犬の「頻尿」と「多尿」は似ているようで原因が異なり、正しく見分けることが適切な診断への近道です。この記事では、頻尿と多尿の違い、原因疾患の見分け方、年齢・性別によるリスク、検査・治療費の目安を獣医師監修のもと解説します。

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この記事のポイント

  • 「頻尿」は少量を何度も出す状態、「多尿」は1回の量も回数も増える状態で原因が異なる
  • 頻尿+痛みは膀胱炎・尿路結石、多飲多尿はクッシング・糖尿病・腎臓病を疑う
  • メスは膀胱炎、未去勢のオスは前立腺肥大のリスクが高い
  • 尿検査は1,000〜3,000円と比較的安価で多くの情報が得られる重要な検査
  • 24時間で体重1kgあたり100ml以上の飲水量は「多飲」の目安

頻尿と多尿の違い:まず正しく見分ける

犬のおしっこが「多い」と感じた場合、それが「頻尿」なのか「多尿」なのかを見分けることが診断の第一歩です。

比較項目 頻尿(ひんにょう) 多尿(たにょう)
定義 トイレの回数が異常に多い 1日の尿量が異常に多い
1回の尿量 少量(数滴〜少しずつ) 正常〜多い
排尿時の様子 力む、痛がる、何度もポーズをとる 通常の排尿姿勢でたくさん出る
飲水量 通常は変わらない 増加(多飲多尿)
主な原因 膀胱炎、尿路結石、前立腺肥大 腎臓病、クッシング症候群、糖尿病
粗相の有無 我慢できずに漏れる 量が多くてトイレが間に合わない

正常な排尿回数と尿量の目安

項目 正常範囲 異常の目安
排尿回数 1日3〜5回(成犬) 1日8回以上、または夜間の排尿
1日の尿量 体重1kgあたり20〜45ml 体重1kgあたり50ml以上で多尿
1日の飲水量 体重1kgあたり50〜70ml 体重1kgあたり100ml以上で多飲

飲水量の測り方: 朝に水入れに入れた水の量を記録し、翌朝の残量との差を計算します。複数の水飲み場がある場合はすべてを合計してください。2〜3日間の平均で判断すると正確です。


頻尿を引き起こす主な原因疾患

膀胱炎

犬の頻尿で最も多い原因が細菌性膀胱炎です。膀胱内に細菌が侵入し炎症を起こすことで、少量の尿を頻繁に排出しようとします。

項目 内容
主な症状 頻尿、血尿、排尿時の痛み(キャンと鳴く)、尿のにおいが強い
好発 メス犬(尿道が短く細菌が侵入しやすい)、高齢犬、糖尿病やクッシングの犬
診断 尿検査(細菌・白血球・潜血の確認)、尿培養検査
治療 抗菌薬の投与(2〜4週間)、十分な水分摂取の促進
費用 尿検査1,000〜3,000円+抗菌薬2,000〜5,000円
再発リスク 高い。基礎疾患(結石、クッシング等)がある場合は繰り返す

尿路結石(尿石症)

膀胱や尿道に結石ができ、粘膜を傷つけたり尿道を塞いだりする疾患です。結石の種類によって治療法が異なります。

結石の種類 好発犬種 特徴 治療法
ストルバイト結石 ミニチュアシュナウザー、シーズー、ビション 細菌感染に伴い形成。アルカリ性尿で成長 食事療法で溶解可能。抗菌薬で感染治療
シュウ酸カルシウム結石 ミニチュアシュナウザー、ヨーキー、トイプードル 食事で溶けない。酸性尿で形成 外科手術で摘出。再発予防に食事管理
尿酸結石 ダルメシアン、ブルドッグ 遺伝的な尿酸代謝異常 食事療法+投薬。手術が必要な場合も

緊急注意: オス犬で尿が全く出ない(尿閉)場合は24時間以内に死亡するリスクがあります。排尿姿勢をとるのに尿が出ない場合は夜間でも緊急受診してください。

前立腺肥大

未去勢のオス犬に多い疾患で、加齢とともに前立腺が肥大し、膀胱や尿道を圧迫して頻尿・排尿困難を引き起こします。

  • 好発: 未去勢のオス犬(6歳以上で50%以上に認められる)
  • 症状: 頻尿、排尿時間の延長、血尿、排便困難
  • 治療: 去勢手術が最も効果的。去勢費用については犬の去勢費用を参照
  • 注意: 前立腺腫瘍との鑑別が重要。去勢しても改善しない場合は精密検査を

その他の頻尿の原因

  • 膀胱腫瘍(移行上皮がん): 中高齢犬で血尿+頻尿が進行性に悪化。スコティッシュテリアに好発
  • 尿道炎: 膀胱炎に伴うことが多い
  • 行動学的な問題: マーキングの増加、分離不安による粗相。犬の分離不安も参照
  • 加齢による尿失禁: 避妊済みのメスに多い。エストロゲン低下による尿道括約筋の機能低下

多飲多尿を引き起こす主な原因疾患

「水をたくさん飲んで、おしっこをたくさん出す」多飲多尿(PU/PD)は、以下のような全身性の疾患が原因であることが多く、いずれも早期発見が重要です。

疾患 主な症状(多飲多尿以外) 好発 検査方法 治療
クッシング症候群 腹部膨満(太鼓腹)、脱毛、皮膚の菲薄化、多食、筋力低下 中高齢の小型犬(プードル、ダックス、ビーグル) 血液検査+ACTH刺激試験+腹部エコー 投薬(トリロスタン)、手術(副腎腫瘍の場合)
糖尿病 多食なのに体重減少、白内障、元気がない 中高齢犬、未避妊のメス、肥満犬 血糖値+糖化アルブミン+尿糖 インスリン注射(生涯)、食事管理
慢性腎臓病 食欲低下、体重減少、嘔吐、口臭、貧血 高齢犬(7歳以上) 血液検査(BUN/Cre/SDMA)+尿検査+エコー 食事療法、輸液、投薬
子宮蓄膿症 陰部からの排膿、発熱、食欲廃絶、腹部膨満 未避妊のメス(発情後1〜2か月) 血液検査+腹部エコー 緊急手術(子宮卵巣摘出)
副腎皮質機能低下症(アジソン病) 嘔吐、下痢、虚脱、徐脈 若〜中年のメスに多い 電解質+ACTH刺激試験 ホルモン補充(生涯)
尿崩症 非常に薄い尿を大量に排出 まれ 水制限試験+デスモプレシン試験 点鼻薬(デスモプレシン)

クッシング症候群の詳細

犬の多飲多尿で最も見逃されやすい疾患の一つです。副腎からコルチゾール(ストレスホルモン)が過剰に分泌されることで起こります。

  • 発見のきっかけ: 「最近水をよく飲む」「お腹がぽっこり出てきた」「毛が薄くなった」
  • 診断が難しい理由: 症状がゆっくり進行するため「加齢のせい」と見過ごされやすい
  • 治療費: 投薬(トリロスタン)で月5,000〜15,000円+定期的な血液検査

糖尿病の詳細

犬の糖尿病はインスリン分泌の低下が原因で、ほぼ全例でインスリン注射が必要になります。

  • 典型的な初期症状: 多飲多尿+多食+体重減少の4徴候
  • 合併症: 白内障(糖尿病犬の約75%が1年以内に発症)、糖尿病性ケトアシドーシス(緊急)
  • 治療費: インスリン+注射器で月5,000〜10,000円+血糖モニタリング

年齢・性別別の頻尿・多尿リスク

年齢・性別 注意すべき疾患 チェックポイント
子犬(〜1歳) 先天性腎疾患、異所性尿管 トイレトレーニング中の「失敗」と病気を混同しないよう注意
成犬メス(未避妊) 膀胱炎、子宮蓄膿症 発情後に多飲多尿・陰部の汚れがあれば緊急
成犬メス(避妊済み) 膀胱炎、尿失禁 寝ているときに尿が漏れる場合はホルモン性尿失禁の可能性
成犬オス(未去勢) 前立腺肥大、マーキング増加 6歳以上で排尿に時間がかかるようになったら受診
シニア犬(7歳以上) 慢性腎臓病、クッシング、糖尿病、腫瘍 年1〜2回の健康診断で尿検査・血液検査を推奨

動物病院での検査と費用の目安

検査項目 目的 費用の目安 備考
尿検査(一般) pH、比重、潜血、糖、タンパク、細菌の確認 1,000〜3,000円 最も基本的かつ重要な検査。自宅で朝一の尿を採取して持参が理想
尿培養検査 原因菌の特定と感受性試験 3,000〜5,000円 膀胱炎が繰り返す場合に推奨
血液検査(CBC+生化学) 腎機能、血糖値、電解質、肝機能を評価 5,000〜12,000円 詳しくは血液検査の費用を参照
腹部エコー 膀胱壁の肥厚、結石、腎臓の形態、前立腺・子宮の評価 3,000〜8,000円 結石や腫瘍の有無を非侵襲的に確認
腹部レントゲン 大きな結石の有無、腎臓のサイズ 3,000〜6,000円 エコーと併用することが多い
ACTH刺激試験 クッシング症候群の確定診断 8,000〜15,000円 採血→ACTH投与→再採血の2段階
尿比重検査 腎臓の濃縮能を評価 尿検査に含まれる 尿比重1.030未満が持続する場合は腎機能低下を疑う

初回の検査費用は、尿検査+血液検査で1〜2万円程度が一般的です。クッシング症候群が疑われる場合はACTH刺激試験が追加され、合計2〜3万円になります。総合的な費用については動物病院の費用ガイドもご参照ください。


自宅での観察ポイントと尿の採取方法

受診前に記録しておきたいこと

獣医師の診断を助けるために、以下の情報を記録して受診時に伝えましょう。

  1. 1日の排尿回数(いつから増えたか)
  2. 1回の尿量(少量を何度も? 大量を何度も?)
  3. 尿の色(無色透明、黄色、濃い黄色、赤色、茶色)
  4. 排尿時の様子(痛がる、力む、途中で止まる)
  5. 飲水量の変化(水入れの減りが早くなったか)
  6. その他の症状(食欲、元気、嘔吐、下痢、体重変化)
  7. 避妊・去勢の有無
  8. 服用中の薬(ステロイドなど多飲多尿を引き起こす薬もある)

自宅での尿の採取方法

方法 手順 メリット デメリット
おたま・紙コップ法 排尿中におたまや紙コップを尿の下に差し入れて採取 道具が身近にある タイミングが難しい。地面の汚れが混入しやすい
ラップ法 トイレシートの上にラップを敷き、溜まった尿をスポイトで吸い取る 犬に触れずに採取できる 室内トイレを使う犬向け
採尿キット 動物病院で専用キットをもらい使用 清潔に採取できる 事前に病院で入手する必要あり

採尿のコツ: 朝一番の尿(早朝尿)が最も検査に適しています。採取後は冷蔵庫で保管し、2〜3時間以内に病院に持ち込んでください。


よくある質問(FAQ)

Q. 犬がトイレに何度も行くのにおしっこが出ないのは危険?

はい、特にオス犬の場合は尿道閉塞の可能性があり緊急疾患です。尿路結石が尿道に詰まると、排尿姿勢をとるのに尿が出ない状態になります。膀胱が破裂したり、急性腎不全を起こしたりする危険があるため、すぐに動物病院を受診してください。メス犬の場合は膀胱炎でしぶっている可能性が高いですが、こちらも早めの受診を推奨します。

Q. 避妊手術後に尿漏れするようになったのは正常?

避妊手術後、特に大型犬のメスで「寝ているときに尿が漏れる」症状が出ることがあります。これはホルモン反応性尿失禁と呼ばれ、エストロゲンの低下により尿道括約筋の緊張が弱くなることが原因です。投薬(エストリオールやフェニルプロパノールアミン)で改善できるケースが多いので、かかりつけの獣医師に相談してください。

Q. ステロイド薬を飲んでから水をたくさん飲むようになったが大丈夫?

ステロイド(プレドニゾロンなど)の副作用として多飲多尿は非常によくみられます。薬の量が適切であれば一時的な副作用として許容される場合もありますが、飲水量が極端に多い場合は獣医師に相談し、減量や代替薬への変更を検討してもらいましょう。

Q. 犬の尿検査は毎年受けたほうがいい?

7歳以上のシニア犬には年1〜2回の尿検査を強くおすすめします。尿検査は1,000〜3,000円と比較的安価でありながら、腎臓病、糖尿病、膀胱炎などの早期発見に非常に有効です。特に多飲多尿の傾向がある犬種(プードル、ダックス、ビーグルなど)は定期検査を習慣にしましょう。


まとめ

犬の頻尿・多尿は、原因によって治療法や緊急度が大きく異なります。

  • 少量を何度も出す(頻尿) → 膀胱炎・尿路結石・前立腺肥大を疑う
  • 大量に何度も出す(多飲多尿) → クッシング・糖尿病・腎臓病・子宮蓄膿症を疑う
  • 排尿姿勢をとるのに出ない → 尿道閉塞の可能性、緊急受診

まずは自宅で飲水量と排尿回数を2〜3日記録し、朝一番の尿を採取してかかりつけの動物病院を受診しましょう。尿検査だけでも多くの情報が得られます。

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