猫白血病ウイルス(FeLV)の症状・感染経路・治療を獣医師が解説
この記事のポイント
- FeLVはFIVと異なり、グルーミングや食器共有でも感染する
- 感染後は「持続感染」と「一過性感染(排除)」に分かれる
- 持続感染猫の多くは3〜4年以内にリンパ腫・白血病・貧血で死亡
- ワクチンによる予防が可能(コアワクチンに準ずる扱い)
- 多頭飼いでは陽性猫と陰性猫の完全隔離が必須
猫白血病ウイルス(FeLV)とは?
猫白血病ウイルス(Feline Leukemia Virus:FeLV)は、猫の骨髄・リンパ組織に感染し、リンパ腫・白血病・免疫抑制・貧血を引き起こすレトロウイルスです。FIVと並び「猫の二大レトロウイルス感染症」と呼ばれます。
FeLVの基本情報
- 分類:レトロウイルス科ガンマレトロウイルス属
- 宿主:ネコ科動物
- 日本での感染率:外猫で約2〜5%、保護猫施設で高め
- 人には感染しない
FeLVとFIVはどう違う?
同じレトロウイルスですが、感染力・感染経路・予後が大きく異なります。
| 項目 | FeLV | FIV |
|---|---|---|
| ウイルス属 | ガンマレトロウイルス | レンチウイルス |
| 主な感染経路 | グルーミング・食器共有・咬傷・母子 | 咬傷・母子 |
| 感染力 | 強い | 弱い |
| 母子感染 | 多い | 少ない |
| 持続感染後の寿命 | 3〜4年以内に死亡が多い | 10年以上生きる猫も多い |
| ワクチン | あり(有効) | 現在流通なし |
| 発症臓器 | 骨髄・リンパ系 | 免疫系全般 |
FeLVの方が感染力が強く、予後も厳しい傾向があります。FIVの詳細は猫エイズウイルス(FIV)の記事をご覧ください。
FeLVの感染経路は?
FeLVは唾液・鼻汁・涙・尿・糞・母乳に含まれており、以下のルートで感染します。
主な感染経路
- グルーミング(なめ合い)
- 食器・水皿の共有
- トイレの共有
- 咬傷
- 母子感染(胎盤・授乳)
- 輸血
FIVと違い、親密な接触だけで感染するため、多頭飼いでは感染拡大リスクが非常に高い点に注意が必要です。
感染後の運命は3つに分かれる
FeLVに曝露された猫は、免疫力と感染量によって以下のいずれかの経過をたどります。
1. 一過性感染(Regressor)
約30〜40%の猫は免疫系でウイルスを排除できます。抗体検査陰性化し、その後発症しません。ただし稀にウイルスDNAが骨髄に潜伏します。
2. 持続感染(Progressor)
約30%の猫はウイルスを排除できず、血中ウイルス量が高い状態が続きます。この群が最も予後が悪く、3〜4年以内に発症死亡することが多いです。
3. 潜伏感染(Regressor with latency)
稀なパターンで、通常は無症状ですがストレスや免疫低下で再活性化することがあります。
子猫ほど持続感染になりやすく、1歳未満で感染すると70〜90%が持続感染になると言われます。
FeLV陽性猫はどんな症状が出る?
初期症状
- 発熱
- 元気消失
- 食欲低下
- リンパ節腫大
進行期の症状
- 貧血:再生不良性・溶血性など多彩
- リンパ腫:縦隔型・消化器型・多中心型
- 白血病:骨髄抑制による汎血球減少
- 免疫不全による二次感染:口内炎・鼻炎・皮膚炎
- 体重減少・削痩
- 神経症状
元気がない・痩せてきたなどの変化があれば猫の元気がないや体重減少の記事も合わせて参考にしてください。
FeLVはどう診断する?
抗原検査(スクリーニング)
- SNAPテストで血中p27抗原を検出
- FIVと同時検査が一般的
- 費用:3,000〜5,000円
確認検査
陽性の場合、以下で確認します。
- IFA(免疫蛍光抗体法):骨髄感染の確認
- PCR検査:プロウイルスDNAの検出
- 2〜3ヶ月後の再検査(一過性か持続かを判別)
血液検査の費用詳細は猫の血液検査費用をご覧ください。
FeLVの治療法は?
FeLVを根治する治療法は現時点でありませんが、以下の対症療法と支持療法で延命とQOL改善が可能です。
抗ウイルス療法
- インターフェロンω
- AZT(ジドブジン)
- ラルテグラビル(人用抗HIV薬の応用)
二次感染・腫瘍への対応
- リンパ腫:化学療法(COPプロトコル等)
- 貧血:輸血・エリスロポエチン製剤
- 口内炎・感染症:抗生剤・消炎剤
支持療法
- 高栄養食
- ストレス軽減
- 3〜6ヶ月ごとの血液検査
FeLVの予防方法は?
ワクチン接種
FeLVワクチンは日本でも利用可能です。WSAVA(世界小児獣医学会)のガイドラインでは、外出猫・多頭飼い猫では「コアワクチンに準じる」扱いとされています。
- 初回接種:生後8〜9週齢
- 追加接種:3〜4週間後
- その後:1年後、以降1〜3年ごと
- 接種前に抗原検査が必須(陰性確認)
ワクチン接種スケジュールの詳細は猫のワクチン接種スケジュールをご覧ください。
その他の予防策
- 完全室内飼育
- 新入り猫は必ずFeLV/FIV検査後に導入
- 陽性猫は陰性猫と完全隔離
- 食器・トイレ・グルーミング道具を別にする
多頭飼いで注意すべきこと
FeLV陽性猫がいる家庭では、以下のいずれかの対応が必要です。
- 陰性猫にワクチンを接種し、部屋を完全に分ける
- 陽性猫のみで飼育する
- 陽性猫を隔離部屋で単独飼育する
FIVと異なり、通常の接触で感染するため、共生のハードルは高くなります。食器・水皿の共有を避けることが絶対条件です。
陽性猫の寿命はどれくらい?
| 感染タイプ | 予想される寿命 |
|---|---|
| 一過性感染(排除) | 陰性猫と同等 |
| 持続感染+室内飼育+ケア | 診断から2〜5年 |
| 持続感染+発症 | 発症から数ヶ月〜1年 |
持続感染猫でも、早期発見と丁寧な管理で寿命を延ばすことは可能です。
日常生活で気をつけること
- ストレスの少ない環境を維持する
- 生肉・生魚を与えない
- 定期的な歯科ケア
- 月1回の体重測定
- 年2回以上の健康診断(持続感染猫は3〜4ヶ月ごと)
まとめ
FeLV(猫白血病ウイルス)はグルーミングや食器共有でも感染する強力なレトロウイルスで、持続感染猫の多くは3〜4年以内にリンパ腫・白血病・貧血で死亡します。ワクチンで予防可能な数少ない猫のレトロウイルス感染症であり、子猫のうちに検査+ワクチン接種を行うことが大切です。多頭飼いでは陽性猫と陰性猫の完全隔離を徹底しましょう。