猫が嘔吐したときの原因と対処法【獣医師監修】
この記事のポイント: 「猫はよく吐くから大丈夫」は危険な思い込みです。毛玉の嘔吐は正常でも、月3回以上の嘔吐は病気のサインかもしれません。この記事では、猫の嘔吐の原因・危険な嘔吐の見分け方・受診の判断基準を獣医師監修のもと解説します。
「猫はよく吐くから大丈夫」は本当か?
多くの飼い主さんが「猫は吐くのが当たり前」と思っていますが、これは半分正しく半分間違いです。
| 嘔吐の頻度 | 判断の目安 |
|---|---|
| 月1〜2回(毛玉のみ) | 正常範囲の可能性が高い |
| 月3回以上 | 何らかの異常がある可能性。獣医師に相談を |
| 週に複数回 | 受診を推奨 |
| 毎日吐く | 早急に受診が必要 |
毛玉を月に1〜2回吐く程度は生理的な範囲ですが、月3回以上の嘔吐は異常のサインと捉えるのが獣医学的な考え方です。「うちの子はよく吐く体質」と思っている場合でも、一度は検査を受けることをおすすめします。
猫が嘔吐する主な原因
生理的な嘔吐(緊急性が低いもの)
- 毛玉(ヘアボール): グルーミングで飲み込んだ毛を嘔吐して排出する。円筒形の毛の塊を吐く。長毛種(ペルシャ、メインクーン、ラグドールなど)に多い
- 食べすぎ・早食い: 一気に食べた直後に未消化のフードをそのまま吐き出す。厳密には「吐出(としゅつ)」に分類される
- 空腹による胆汁嘔吐: 空腹が長く続くと、黄色い液体(胆汁)を吐くことがある。食事の間隔を短くすると改善することが多い
- 草を食べた後の嘔吐: 室内の観葉植物や猫草を食べて吐くことがある。有毒な植物でなければ問題ないことが多い
病的な嘔吐(受診が必要)
猫の嘔吐を引き起こす病気は多岐にわたります。中高齢の猫は特に注意が必要です。
- 慢性腎臓病(CKD): 猫の死因として最も多い病気のひとつ。腎機能の低下で体内に老廃物が蓄積し、嘔吐・食欲低下・多飲多尿を引き起こす。7歳以上の猫の約30〜40%が罹患するとされる
- 甲状腺機能亢進症: 中高齢の猫に多い内分泌疾患。嘔吐・体重減少(食欲はある)・多動・頻脈が特徴。血液検査でT4値を測定して診断
- 炎症性腸疾患(IBD): 消化管の慢性炎症により、嘔吐・下痢・体重減少が続く。リンパ腫との鑑別が重要で、確定診断には内視鏡検査が必要になることがある
- 膵炎: 猫の膵炎は犬と異なり症状が曖昧。嘔吐・食欲不振・元気消失が主な症状。血液検査(猫特異的膵リパーゼ:Spec fPL)や超音波検査で判断
- 異物誤飲: ひも、輪ゴム、おもちゃの一部、ビニール袋などを飲み込むと胃腸に詰まる。特にひも状の異物は腸閉塞を引き起こし、緊急手術が必要になる
- 消化管リンパ腫: 高齢猫に多い悪性腫瘍。慢性的な嘔吐と体重減少が徐々に進行する
- 肝リピドーシス(脂肪肝): 肥満猫が食欲不振で2〜3日以上食べないと発症するリスクがある。嘔吐・黄疸・極度の食欲不振が見られたら緊急受診
【独自】猫の嘔吐物チェック表 -- 状態と色で原因を推定
pet-dockが獣医師の監修のもと独自に作成した、嘔吐物の状態から原因と緊急度を判断するための一覧表です。
| 嘔吐物の状態 | 色・見た目 | 考えられる原因 | 緊急度 |
|---|---|---|---|
| 毛の塊(円筒形) | 茶色〜灰色 | 毛玉の排出(正常) | 低 |
| 未消化のフード | フードの色のまま | 早食い、食べすぎ | 低 |
| 泡状の液体 | 透明〜白 | 空腹、胃酸過多、ストレス | 低〜中 |
| サラサラの液体 | 黄色 | 胆汁嘔吐(空腹時間が長い) | 低〜中 |
| ドロドロの内容物 | 茶色 | 消化途中のフード、胃腸炎 | 中(繰り返すなら受診) |
| 血液が混じる | ピンク〜赤 | 胃粘膜の損傷、潰瘍、異物 | 高(当日中に受診) |
| コーヒー残渣のような見た目 | 暗褐色〜黒 | 上部消化管出血 | 高(至急受診) |
| 異物が混じる | 様々 | ひも、ビニール、おもちゃの誤飲 | 高(至急受診) |
| 寄生虫が見える | 白い細長いもの | 回虫など消化管寄生虫 | 中(早めに受診) |
【独自】猫の嘔吐 -- 年齢別リスクマップ
猫は年齢によって嘔吐の原因傾向が大きく異なります。pet-dockが獣医師への取材をもとに作成した年齢別リスクマップです。
子猫(〜1歳)
| リスク要因 | 詳細 |
|---|---|
| 感染症 | パルボウイルス(猫汎白血球減少症)。ワクチン未接種の子猫は重症化しやすい |
| 寄生虫 | 回虫、コクシジウムなど。母猫からの感染が多い |
| 異物誤飲 | 遊びの延長でひも、輪ゴム、小さなおもちゃを飲み込む |
| 低血糖 | 嘔吐で食事が取れないと急速に低血糖に陥る |
成猫(1〜7歳)
| リスク要因 | 詳細 |
|---|---|
| 毛玉 | 特に長毛種で頻度が高い |
| 食物アレルギー | 特定のタンパク源に反応して嘔吐。皮膚症状を伴うことも |
| 異物誤飲 | ひも状の異物が最も危険。ひもで遊ばせないよう注意 |
| IBD | 30代前後(人間でいう中年期)から発症が増え始める |
| ストレス | 多頭飼育、引っ越し、新しいペットの追加などが原因 |
シニア猫(7歳〜)
| リスク要因 | 詳細 |
|---|---|
| 慢性腎臓病 | 最も警戒すべき疾患。年2回の血液検査・尿検査を推奨 |
| 甲状腺機能亢進症 | 食べているのに痩せる。嘔吐・多動・頻脈が特徴 |
| 消化管リンパ腫 | 慢性嘔吐+体重減少が徐々に進行 |
| 膵炎 | 症状が曖昧で見逃されやすい |
| 糖尿病 | 嘔吐・多飲多尿・体重減少。肥満猫はリスクが高い |
猫が嘔吐したときの自宅での対処法
ステップ1: 嘔吐物を観察・記録する
吐いたものの色・量・内容物をスマートフォンで撮影しておいてください。いつ・何回吐いたか、食事からの経過時間も記録しましょう。これらの情報は動物病院を受診する際に非常に役立ちます。
ステップ2: 短時間の絶食と水分管理
嘔吐後は4〜6時間程度食事を控え、胃を休ませます。
- 水: 少量ずつ、こまめに与える。一度に大量に飲ませると再び吐くことがある
- 注意: 猫は犬と異なり、**24〜48時間以上の絶食で「肝リピドーシス(脂肪肝)」**を発症するリスクがあります。特に肥満猫は危険。嘔吐で食事が取れない状態が1日以上続く場合は、必ず動物病院を受診してください
ステップ3: 消化にやさしい食事で再開
4〜6時間経過して嘔吐が止まったら、消化しやすい食事を少量から与えます。
- おすすめ: ウェットタイプの消化器サポート用療法食、または鶏ささみを細かくほぐしたもの
- 量: 通常の1/4量から開始し、2日かけて通常量に戻す
- 回数: 1日4〜5回に分けて少量ずつ
やってはいけないこと
- 「猫はよく吐くから」と放置する: 月3回以上の嘔吐は受診の目安
- 人間の薬を飲ませる: 猫はアセトアミノフェン(タイレノール等)で中毒死する。人間の薬は絶対に与えない
- 強制給餌を自己判断で行う: 嘔吐が続く状態での強制給餌は誤嚥のリスクがある。獣医師の指導のもとで行う
- 長期間の絶食をさせる: 猫の肝リピドーシスのリスクに注意。1日以上食べなければ受診
すぐ病院に行くべきケース(緊急サイン)
以下のいずれかに該当する場合は、速やかに動物病院を受診してください。
至急受診が必要
- 嘔吐物に血液が混じっている(赤色・暗褐色)
- ひも状の異物を飲み込んだ可能性がある
- 嘔吐が1日に3回以上繰り返されている
- ぐったりして動かない
- 子猫(生後6ヶ月未満)が複数回嘔吐している
- 呼吸が荒い、苦しそう
早めの受診を推奨
- 24時間以上何も食べていない(肝リピドーシスのリスク)
- 嘔吐に加えて下痢がある
- 水を飲む量が急に増えた(多飲は腎臓病・糖尿病のサイン)
- 体重が減少している
- 元気がなく、いつもの場所に隠れている
- 嘔吐が1週間以上断続的に続いている
猫の嘔吐を減らすための予防策
毛玉対策
- 定期的なブラッシング: 長毛種は毎日、短毛種でも週2〜3回。飲み込む毛の量を減らす
- 毛玉ケア用フード: 食物繊維が多く配合されたフードで、毛玉の消化管通過を助ける
- 毛玉除去剤: ラキサトーンなどのペースト。週2〜3回与えることで毛玉の排出を促す
食事管理
- 早食い防止食器を使う: 突起のある食器で早食いを防止
- 1日の食事を3〜4回に分ける: 一度に大量に食べることによる嘔吐を防ぐ
- フードの切り替えは7〜10日かけて: 急な変更は胃腸に負担がかかる
- 室温に近い温度で与える: 冷蔵庫から出したばかりのウェットフードは胃を刺激しやすい
環境管理
- ひも状のものを片付ける: ひも、リボン、輪ゴム、ヘアゴムは猫が飲み込みやすい。遊び終わったら必ず片付ける
- 有毒な植物を置かない: ユリ科の植物は猫にとって致命的。観葉植物の毒性を事前に確認する
- ビニール袋を放置しない: ビニールを舐めたり噛んだりする猫は多く、誤飲の原因になる
定期健診
- 7歳以上は年2回の健康診断: 慢性腎臓病と甲状腺機能亢進症の早期発見が最大の目的
- 血液検査+尿検査のセット: 腎機能は尿検査で早期に異常を検出できることがある
- 体重の定期測定: 月1回の体重測定で変化を早期に察知
動物病院での検査と治療
一般的な検査内容と費用の目安
| 検査 | 内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 身体検査・触診 | 腹部の痛み、脱水度、甲状腺の触診 | 1,000〜2,000円 |
| 血液検査(CBC・生化学) | 腎臓・肝臓の数値、T4、膵リパーゼなど | 5,000〜15,000円 |
| 尿検査 | 尿比重、タンパク尿の有無(腎臓病の早期発見) | 2,000〜4,000円 |
| 腹部レントゲン | 異物、腸閉塞、臓器の異常を確認 | 4,000〜8,000円 |
| 腹部エコー(超音波) | 腎臓・消化管・膵臓の詳細な状態を確認 | 4,000〜8,000円 |
| 内視鏡 | 消化管内の観察、生検、異物除去 | 30,000〜80,000円 |
注意: 上記の費用は一般的な目安です。動物病院や地域によって異なりますので、事前にお問い合わせください。
主な治療法
- 輸液療法(点滴): 脱水の補正。腎臓病の猫では定期的な皮下補液が必要になることもある
- 制吐剤: マロピタント(セレニア)やオンダンセトロンなど
- 食欲増進剤: ミルタザピンなど。食欲が回復しない場合に使用
- 食事療法: 消化器サポート食、腎臓病用療法食など原因に応じて選択
- 甲状腺治療: メチマゾールの内服、またはヨウ素制限食
- 外科手術: 異物除去、腸閉塞の解除
よくある質問(FAQ)
Q1: 猫が毎日吐くのですが、病気ですか?
A1: 毎日の嘔吐は正常ではなく、何らかの病気が隠れている可能性が高いです。慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症、IBD(炎症性腸疾患)、食物アレルギー、消化管リンパ腫などが考えられます。できるだけ早く動物病院で血液検査を受けてください。詳しくは「猫が毎日吐く原因と受診タイミング」も参考にしてください。
Q2: 猫が吐いた後、すぐにご飯を欲しがるのは大丈夫?
A2: 吐いた後すぐに食欲がある場合は、早食いや毛玉が原因の一時的な嘔吐の可能性が高く、深刻な病気の可能性は比較的低いです。ただし少量ずつ与え、急いで食べないよう工夫してください。吐いた後にぐったりしている、食欲がない場合は病気のサインですので受診してください。
Q3: 猫の嘔吐を減らすために自宅でできることは?
A3: 毛玉対策として定期的なブラッシングと毛玉ケアフードの使用が効果的です。また、1日の食事を3〜4回に分けて少量ずつ与える、早食い防止食器を使う、フードを室温に戻してから与えるなどの工夫で嘔吐を減らせるケースがあります。
Q4: 猫が吐いた後、何時間絶食させるべき?
A4: 4〜6時間程度の絶食が適切です。ただし、猫の場合は24時間以上の絶食は肝リピドーシス(脂肪肝)のリスクがあるため、犬のように長時間の絶食は避けてください。4〜6時間経過しても嘔吐が続く場合は、動物病院を受診してください。特に肥満猫は肝リピドーシスのリスクが高いため注意が必要です。
Q5: 猫の血尿と嘔吐が同時にある場合は?
A5: 血尿と嘔吐が同時に見られる場合は、尿路閉塞(特にオス猫)や急性腎不全の可能性があります。オス猫が排尿姿勢をとっても尿が出ない状態は生命に関わる緊急事態です。すぐに動物病院を受診してください。
Q6: 猫の嘔吐で動物病院を受診した場合、費用はどのくらいかかりますか?
A6: 初診料(1,000〜2,000円)に加え、血液検査で5,000〜15,000円、レントゲンで4,000〜8,000円が目安です。詳しくは「動物病院の費用ガイド」をご覧ください。
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この記事は獣医師の監修のもと作成されています。ただし、個々の症状は猫の状態や体質によって異なります。愛猫の様子が心配な場合は、自己判断せずに動物病院を受診してください。
最終更新: 2026年4月1日