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猫の腎臓病ステージ別|余命と治療費・延命法を獣医師解説
猫の健康

猫の腎臓病ステージ別|余命と治療費・延命法を獣医師解説

14分で読める

監修: pet-dock獣医師監修チーム

猫の慢性腎臓病(CKD)ステージ別治療と余命を獣医師監修で徹底解説

この記事のポイント:

  • 猫の慢性腎臓病(CKD)は15歳以上の猫の約30〜40%が罹患する高齢猫の最大の死因です。
  • IRIS ステージ分類(1〜4)により治療方針と予後が決まり、ステージ2で発見できれば中央生存期間1,100日超と良好です。
  • 早期発見の鍵はSDMA尿比重、治療は療法食・リン吸着剤・降圧薬・皮下輸液を組み合わせます。

猫の腎臓病とは

猫は進化の過程で水分の少ない環境に適応したため、腎臓への負担が大きく、高齢になるとほぼ必発の疾患です。

猫CKDの特徴

  • 進行性・不可逆性
  • 症状が出る頃には機能の66%以上が失われている
  • 早期発見が寿命を左右する
  • 適切な管理で数年単位の延命が可能

IRIS ステージ分類(猫)

ステージ クレアチニン(mg/dL) SDMA(μg/dL) 状態
1 <1.6 <18 腎障害あり・無症状
2 1.6〜2.8 18〜25 軽度高窒素血症
3 2.9〜5.0 26〜38 中等度・症状出現
4 >5.0 >38 重度・尿毒症

中央生存期間(診断時ステージ別)

ステージ 中央生存期間
2 約1,100日(3年超)
3 約680日
4 約35日

ステージ2での発見が寿命を大きく左右します。


症状

ステージ1〜2(初期)

  • 水をよく飲む(多飲)
  • おしっこが多い・薄い(多尿)
  • 被毛の艶が悪い
  • 体重が少し減った

ステージ3

症状 詳細
食欲低下 徐々に
嘔吐 週数回
元気消失 活動量低下
便秘 脱水による
口臭(アンモニア臭) 尿素排泄不全
体重減少 顕著

ステージ4

  • 激しい嘔吐
  • 食欲廃絶
  • 脱水重度
  • 口内潰瘍
  • 低体温
  • 痙攣・昏睡

原因

原因 詳細
加齢性 最多。7歳以降から進行
先天性 多発性嚢胞腎(PKD):ペルシャに多い
感染性 腎盂腎炎、猫伝染性腹膜炎
中毒性 ユリ、不凍液、NSAIDs、抗生剤
尿路閉塞 尿道閉塞
高血圧 一次性・二次性

検査と早期発見

SDMA -- 早期発見の最強ツール

SDMA は腎機能低下をクレアチニンより平均9.8ヶ月早く検出できます。7歳以降の猫は年1〜2回の測定を推奨します。

検査 内容 費用目安
血液検査(BUN, Cre, SDMA) 腎機能評価 5,000〜12,000円
尿検査(比重、UPC比、沈渣) 最重要。比重<1.035で疑い 2,000〜5,000円
血圧測定 高血圧の評価 1,500〜3,000円
リン・カルシウム 電解質異常 含む
腹部超音波 腎サイズ、皮質厚、結石 5,000〜10,000円
T4(甲状腺) 甲状腺機能亢進症の除外 4,000〜8,000円

治療 -- ステージ別

ステージ1

  • 定期モニタリング
  • 水分摂取量の確保
  • 腎負荷を避ける(ユリ・NSAIDs)

ステージ2

治療 月額費用
腎臓療法食 5,000〜15,000円
リン吸着剤(必要時) 3,000〜6,000円
降圧薬(アムロジピン) 2,000〜4,000円
尿タンパク>0.4なら ACE阻害薬 3,000〜5,000円

ステージ3

  • 上記+皮下輸液(週2〜3回、自宅または通院)
  • 制吐剤(マロピタント)
  • 食欲増進剤(ミルタザピン、カプロモレリン)
  • 赤血球造血剤(ダルベポエチン)- 貧血時

ステージ4

  • 入院輸液(1日5,000〜12,000円)
  • 集中的な電解質補正
  • 輸血(重度貧血時)

療法食の重要性

猫CKD治療で最もエビデンスが強いのが腎臓療法食です。

栄養素 一般食 療法食
タンパク質 30〜40% 25〜30%(高品質)
リン 0.8〜1.5% 0.3〜0.6%
ナトリウム 0.3〜0.6% 0.2〜0.4%
オメガ3 強化
カリウム 標準 補強

代表例: ロイヤルカナン「腎臓サポート」、ヒルズ「k/d」、ピュリナ「NF」、Specific「FKW」

食べてくれない場合の工夫

  • 複数のメーカー・形状を試す(ドライ/ウェット/パウチ)
  • 少量頻回(1日4〜6回)
  • 人肌に温める
  • 低ナトリウムトッピング
  • 強制給餌は肝リピドーシスのリスクがあるため最終手段

【独自】自宅皮下輸液ガイド

獣医師の指導を受ければ自宅で実施可能です。

項目 内容
輸液剤 乳酸リンゲル液等
用量 体重1kgあたり10〜20ml
頻度 週2〜7回(ステージによる)
部位 首の後ろの皮下
所要時間 5〜10分
月額費用 3,000〜8,000円(輸液剤・針代)

注意点

  • 冷たいと嫌がるので人肌に温める
  • 毎回同じ場所は避ける
  • 無菌操作
  • 心疾患併発猫は慎重に

受診セルフチェック

  • 7歳以上
  • 水を飲む量が増えた
  • おしっこの量が増えた
  • 体重が減ってきた
  • 食欲にムラがある
  • 被毛の艶が悪い
  • 時々嘔吐する
  • 口臭が強い

2項目以上該当なら腎機能検査を受けてください。


FAQ よくある質問

Q1. SDMAとは? A. Symmetric Dimethylarginine。クレアチニンより約10ヶ月早く腎障害を検出する指標です。7歳以降の猫の健康診断では必須。

Q2. 療法食を食べてくれません。 A. 複数メーカーを試す、ウェットに変える、温める、少量頻回にする等の工夫が必要です。絶食は肝リピドーシスのリスクがあるので、食べないよりは一般食の方がマシな場面もあります。

Q3. 水をたくさん飲むのは良いこと? A. 自然に飲みたがるのは脱水補正のサインです。新鮮な水を複数箇所に置き、自動給水器や流れる水も試してください。

Q4. 皮下輸液は痛くないの? A. 最初は違和感がありますが、多くの猫は慣れます。好きなおやつと組み合わせて習慣化しましょう。

Q5. 猫の寿命はどれくらい延びますか? A. ステージ2で診断・療法食開始できれば診断から3年以上の中央生存期間が報告されています。ステージ4では数週間〜数ヶ月です。

Q6. ペット保険は? A. 発症前の加入が重要です。ペット保険比較を参照してください。


まとめ

猫の腎臓病は高齢猫の宿命とも言える病気ですが、早期発見と療法食・皮下輸液を中心とした包括管理で寿命を大きく延ばせます。7歳以降は年2回のSDMA検査を含む健康診断を習慣化してください。


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免責事項: 本記事は一般的情報を提供するもので、個別診療に代わるものではありません。

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